初任者研修会と日本心肺蘇生学会講習会
夏のある日、養護学校教員対象の新任研修において、指導主事による「心肺蘇生法」の講義が行われた。体育科教員であるので、その概要は理解し、実習なども行っていた。
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ところが、その指導主事が驚くべきことを言い放った。
「プールで溺れた時などには、即座に心肺蘇生を行わなければならない。ただし、〈心臓マッサージ〉は、3cm押せばいい。5cmも押して、あばら骨でも折れたら大変なことになる。3cmでいい。『〈心臓マッサージ〉をやった』という事実が残れば、仮に助からなくて、裁判になったとしても、負けることはないから」
翌年、今度は日本心肺蘇生学会主催の心肺蘇生法講習会に参加した。救急外来を始めとする、医師の集まりの学会だった。
そこで講義をされたお医者さんは、次のように述べられた。
「〈心臓マッサージ〉は、5cmはしっかりと押してほしい。とにかく心臓に届かなければ意味がない。もし、肋骨が折れて、肺に刺さったとしても、心臓さえ動かしてくれていれば助けられるから。何としても心臓を動かし続けてほしい。」
指導主事の言葉を聞いた時の衝撃は、一生忘れられないだろうし、教育行政への疑念・不信が根付いたことは言うまでもない。そして、その後の学校、教育現場におけるさまざまな問題が生じ、その「問題の所在」の解明を図ろうとする時に、その疑念・不信が湧き上がり、息づいてくるのである。
「子どもの命」を、「子どもの人権」を、どう考えているのだろうか?