シャツ専門店
私はそれから奥の本棚に足を運び、いくつかの本を手に取った。置いてあるジャンルは様々で、歴史書があれば、民族の本があった。多肉植物を特集したものや、昆虫図鑑もあった。
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驚くほど色彩豊かな昆虫たちが、驚くほど美しく並べられ、まるで模様のように表紙を飾っている。民族の本は、ネイティブアメリカン、アボリジニ、アイヌ民族。
表紙には彼らが民族衣装を着て立っている写真が使われていたりして、この店によく馴染んでいた。私はなんとなく、アイヌの本を手に取った。
アイヌ民族は、同じ日本人のはずで、でもどこか異国の人のような気がした。表紙の彼らは土色の顔で、アイヌ独特の素晴らしい刺繍が施された着物を着て、足元には毛皮のブーツを履いていた。
やがては北海道の先住民族となった彼らは、自分たちのことをアイヌと呼び、アイヌとは「人間を意味する」のだと言った。そして少数民族がそうであるように、彼らも自然と共に生き、狩りや漁をして、その土地で得られるあらゆるものを採取して生きてきた。
そして、アイヌの歴史や伝説などを含んだ詩を詠んだり、音楽、歌、踊りなど伝統文化の深みを形成するのと一緒に、精神世界の隅々まで行き渡る深い信仰も築きあげてきた。
私は、文字の一つ一つから目が離せなくなった。ゴクゴクと言葉が入ってくる。彼らのことを知りたいと思った。
「ゆっくり読みたければ、持って帰ってください。お貸ししますよ」
私はふと我に返り、今ここが彼の店であることを一瞬忘れていた自分に驚いていた。あれだけ緊張していたはずが、本を手にするとあっという間に世界は文字たちのものになる。
「すみません。ついつい読みふけってしまいました。お礼を言いに来たのに、ごめんなさい」
「全然。そのために置いているのです。せっかく置いていても、なかなか手に取ってくれる人はいません。販売しているものもあるのですが、すみません。その本は僕も好きで、売っていないのです」
彼は歩いて来て、私からアイヌの本を受け取り、ページをいくつかめくった。開いたページにはアイヌの衣服について書いてあって、そこには刺繍が施された服たちが載せられていた。