エッセイ 芸術 2021.02.24 「今を大切に 君の人生だよ」より「ブルータス」 今を大切に 君の人生だよ 【第5回】 青山 珪香 あらたな書芸術を模索しつづける書家からのメッセージ こんな時代だからこそ、ぬくもりのある言葉を―― 時代がどんなに進んでも、心に届くのは人のあたたかみ。 わかる。感じる。励まされる。 70年近い書人生のなかで、「だれもが読めて心に響く書のものを」との思いから、 多くを自作の文で制作してきた書家による作品集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 輪かくが黒く出る メタリック書道液で 書いています (ブルータス)
小説 『魂業石』 【新連載】 内海 七綺 沼のような目でこちらを覗くおじさん…通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋を引っ張られ、後ろから口を塞がれた。 茜色の気配が透明な青を少しずつ蝕む帰り道だった。背の高いブロック塀に囲まれた脇道の暗く湿った闇から、男がじっとこちらを覗いている。瞬き一つしない、暗い沼のような目。変なおじさんだ、と雪子は思った。姦(かしま)しく笑っている亜弓(あゆみ)たちは男にまったく気づいていない。そのまま一緒に通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋をつかんで引っ張られ、後ろから口を塞がれた。叫ぶ暇もなかった。亜弓た…
小説 『ツワブキの咲く場所』 【第17回】 雨宮 福一 ペットのハムスターを庭に生き埋めにした。手のひらに、脈打つ小さな心臓。皆が私の方を見た。私を、見てくれたのだと思った。 【前回の記事を読む】まだ幼い妹を憎み、重ね合わせた…見殺しにした女の子と。丸裸に剥かれ、ぷらぷら揺れる小さな足に、黄色の靴下。「妹へ。私があなたたちと一緒に暮らせないのは、あなたたちのせいです」思わず書き出した一文へ横線を引き、急いで消した。便せんがぐしゃぐしゃにされる音が部屋の中に虚しく響く。何とか生活を切り盛りしようとするが、私たちの暮らしは貧窮をきわめた。それが自己の存在意義を証明するとで…