罪と愛
二〇××年、×月×日に、私の元夫は彼の母親を殺害した。彼は高校を卒業した後、大学へは行かず、会社を立ち上げて成功し、資産家になった。その頃、私と結婚した。
彼は俗にいうマザーコンプレックスだったらしく、私と彼の母親は性格や顔立ちがそっくりだったらしい。その三年後、彼の会社の取締役と私の不倫がばれて離婚したが、まだ彼は私のことを愛していたらしく、離婚するときかなりの財産を私に譲渡してくれた。これは彼が刑務所の中で書いていた自分の半生の一部である。
……小学三年生の夏休み、僕は家族で花火を見た。きれいに咲いては散っていく花火を見て、僕は人生がとてもはかないように思った。何より死というものが怖かった。人は死んだらどこに行くのだろうか、人は死んだら何が残るのだろうか、永遠に続くことと、終わりがあることは、どちらが良いだろうか。
その日は母親に泣いて相談したので、なんとかおさまったが、その日から僕は、死について毎晩考えることになった。
中学二年生の頃、僕はいじめられていた。その時は、死のことよりいじめのことに悩んでいた。世間はいじめをなくすためにいじめる側を直そうとするが、それでは僕にはなにも選択肢がないのだろうか、世間はいじめを見たら止めようというが、そんな人物が存在するだろうか、また、そんな人が存在したとしても、果たしてそれは本当にいじめを止めているのだろうか。
僕は悩んでばかりいる自分は間違っていると思っていた。人生は、後ろを振り返らず、何事にも何も考えずに前を向き挑戦し、何か良いことをするチャンスがあったら、偽善でもするほうが良いと思っていた。そのようなことができないから、いじめられると思っていた。そのことを父親に話すと、当たり前のように「悩むことは良いことだ」と言った。