行動せず悩み続けるか、復讐するか
「青白かったか?」
「はい」
「そして、目はお前を?」
「絶えず私たちを」
「そこに居たかった」
「驚いたと思います」
「そうだろう、そうだろう。それで長い間居たか?」
「百を数えるくらいでした」
するとマーセラスとバーナードが
「もっと、もっと、長かった」
と言った。ホレイショーが
「いや、私が見たのはそのくらいだった」
と言った。
「顎髭は白色だったか?」
「王が生きていた頃に私が見た時と同じ、白色でした」
「私も今夜見よう。おそらく出る」
「きっと」
「王の姿ということが本当ならば、黙らぬぞ。たとえ地獄が開いて、私の平和を持って行っても。皆、今まで隠してくれていた以上、今夜何が起きても内密にしてほしい。お前たちの親切には必ず礼をする。いいか、十一時から十二時の間に私は行くからな」
するとホレイショー、マーセラスとバーナードが
「はい」と言った。
「お前たちの好意には感謝している、さらばだ」
その夜にハムレット、ホレイショー、マーセラスの三人は胸壁の上で亡霊が出てくるのを待った。ハムレットたちが話していると、突然亡霊が現れた。ハムレットは亡霊に話しかけたが、亡霊は何もしゃべらず手招きをした。どうやらハムレットだけに話したいらしい。ホレイショーとマーセラスが止めるのも聞かずに、ハムレットは亡霊についていった。亡霊とハムレットが二人だけになると、亡霊はハムレットに、自分はクローディアスに殺されたことを打ち明けた。そしてハムレットはクローディアスへの復讐を決意したのだった。
しかし、ハムレットはいつまでたっても復讐を実行できなかった。彼にはいくつかわからないことがあった。まず一つ目は、復讐を果たしたら自分は死罪だが、あの世というところはどのような場所かということである。二つ目は、本当にクローディアスは王を殺したのかということである。三つ目は、クローディアスは本当に悪い人物なのかということである。彼も彼なりの大義があって王を殺したはずである。四つ目は、そもそも復讐とは実行してもいいものなのかということである。最後にこのまま答えを探し続けてもいいのかということである。いっそ考えることを止めて復讐してしまおうかとも考えたが、どうしても踏ん切りがつかないのである。ハムレットはこう呟いた。
「To be, or not to be, that is the question」