とりあえずのミルクを与えられ一人で眠って一人きりで過ごす度に、トゲの数はどんどん増えていきます。ピンクの赤ちゃんは、トゲトゲの子供に育ちます。トゲがあるせいで友達とも遊びづらいです。仲良くなって手を繋ごうとしたら、自分のトゲで友達を刺して傷つけてしまうのです。

「痛い! 何するの!? もう来ないで!」

友達は離れて行ってしまいました。

「ただもっと仲良くなりたかっただけなのに……」

みんなと仲良く遊べないから、トゲトゲのピンクは親や先生に怒られることが増えていきます。

「もういい! 誰も分かってくれない!」

悲しくて怒って、またたくさんのトゲが出てきました。

トゲトゲのピンクは大人になるにつれ、トゲだらけの仲間に囲まれて過ごすようになります。お互いにトゲトゲ同士だったから、傷つけ合わないように触れ合わない距離を保っていました。そのせいで、トゲの中に隠れているありのままのその子の部分までは、見ることも触れることもできません。だからでしょうか、トゲトゲのみんなは笑っていても心から楽しそうではなく、何かあるとすぐに怒っていました。

そんなある日、トゲトゲのピンクがいつもと違う道を通っていると道の向こう側に、まん丸のブルーを見かけます。

「あれ? トゲがない……トゲがない丸って初めて見た!」

ブルーの周りにはまん丸の友達がたくさんいて、楽しそうで、なんだか違う世界を見ているようでした。トゲトゲのピンクの心はザワザワして苦しくて、そこから逃げ出してしまいます。

「今のは何だった? 楽しそうだったな。でも私には関係のない世界のこと……」

ピンクはその日のことを忘れることにしました。

しばらく経ったある日、また道の向こう側のまん丸のブルーに出会います。ピンクとブルーは道を挟んでですが、よく話すようになり笑い合うこともありました。

そして、トゲトゲのピンクはこう思うようになったのです。

「何だか近頃、楽しいな。ずっとこんな日が続けばいいのに……」

そう思うと同時に、ピンクは怖くなります。

「仲良くなろうと近づいて、私のトゲで傷つけてしまったらどうしよう……きっとブルーもびっくりして、離れて行ってしまう。どうしよう……」

ピンクは悩みます。悩みながら鏡で自分の姿を見てみました。

「トゲトゲだらけ……私だってブルーのようなまん丸が良かった……どうして私はこんななの?」

涙が出ました。ピンクはとても怖くなり外に出られなくなってしまいます。

ずっとピンクが出て来ないから、心配したブルーが訪ねてきて、ピンクを呼びます。ピンクは、ブルーの声を聞きながらまた思うのです。

「こんなトゲトゲの姿なら、いつか私のトゲでブルーを傷つけてしまう。どうしよう……」と。