身体のあらゆるパーツを再生でき人工胎盤から人間そのものを作り出すことも可能で、遺伝子を操作すれば成人としての身体を作り出すことも可能であるとの理論を発表している。しかし彼の言い分としては、どんなに身体を再生しても脳の記憶老化はiPS細胞を使っても守りきれないし再生もできないから、見た目だけそっくりの身体はできても人間としての本人そのものを再生することはできないと言っている。

本多は脳の再生ができれば死なない人間を作ることができると、中本と酒を酌み交わすたびに繰り返して言う。中本も同じ気持ちである。

織田はもともとが機械工学の研究が大好きな人間である。そんな織田の目にかなった青年で、アイデアだけでコツコツ研究していて、ORITA財団から資金援助を受けている中の1人にロケット研究の堀内がいた。

堀内は当初研究資金の調達にクラウドファンデイングを組んでいたのであるが、なかなか思うように資金が集まらない。そんな堀内のひたむきな研究努力に織田は自分の若い頃の研究者としての姿を重ね見た。

堀内が開発しているものは地上と宇宙を飛行機のように往復できる高性能エンジンである。燃料は水素と酸素の化学反応による爆発で推進する仕掛けではあるが、従来の水素ロケットエンジンとは出力が2倍も違う。何度も失敗を重ねたが、燃焼効率はどんどん上がり、そのエンジンは着実に完成に向かっていた。

この堀内は、エンジンと燃料のことはわかるが、エンジンの制御を行なう制御盤やコンピューターシステムのことはさっぱりであり、そこで頼りにしていたのがAI研究のスペシャリスト伊藤である。伊藤も堀内と同じく全くの研究馬鹿であった。