俳句・短歌 歌集 四季 2021.02.10 歌集「忘らえなくに」より三首 歌集 忘らえなくに 【第28回】 松下 正樹 四季がある日本は移ろいやすいのだろうか。 行き交う人々の心や街の景色は千変万化で、過去はさらに記憶の彼方へ押しやられてしまっているかのよう。 だが、南の島々には、あの戦争を経ても変わらぬ日本の心が残されていた。 過去と現在、時間の結び目を探しながら、日本古来の清き明き心を見つける旅の歌短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 ひたすらに計器をたよりて航(ゆ)く船の 南々東に針路をとりたり 白波を分けゆく船のデッキには 北斗の柄杓(ひしゃく)が垂れて従(つ)きくる 夜あけより温かき風頬をなづ 小笠原気団の圏内に入る 【小笠原諸島】 [出航、おがさわら丸]
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『上海の白い雲』 【第10回】 河原 城 妹が天国に逝った。幸せな人生を送らせてあげたかった。お金を貯めて、大きな病院に入れて、私が毎日お見舞いに行って… 《小詩(シャオシ)、天国で楽しく健やかにいることを祈っています。あなたのことを忘れることができません。母亲(ムーチン)からの手紙を領事館から受け取りました。小詩(シャオシ)が天国に逝ったことを知りました。小さい時から不自由な体で希望の持てない人生を送らせてしまいました。病気を克服して、人としての幸せな人生を送らせてあげられなかったことが、残念です。最後に一目小詩(シャオシ)に会いたかったのですが…