かあさんに
かあさんに会いに行った日
杖をつきつき 一歩一歩
自分の部屋から私たちのところへ
会いに来るたび 衰えていくかあさん
十五分もしないうちに
「ゆっくりしてけ こわいから横になるわ」
やっと椅子から立ち 部屋へ
最後まで 人の手を借りたくない という強い意志が
背中 曲った腰
かあさんの後姿が語っていた
いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり
いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う――
母という存在をなくして、心は声なき言葉を語りだす。
失ってから、ふたたび得る。ひとすじの救済への過程。
「かあさん、ありがとう」
第21回 日本自費出版文化賞「詩歌部門賞」受賞作品を連載でお届けします。
かあさんに会いに行った日
杖をつきつき 一歩一歩
自分の部屋から私たちのところへ
会いに来るたび 衰えていくかあさん
十五分もしないうちに
「ゆっくりしてけ こわいから横になるわ」
やっと椅子から立ち 部屋へ
最後まで 人の手を借りたくない という強い意志が
背中 曲った腰
かあさんの後姿が語っていた