こより川のグラウンドで
するとなん人かの少年が、くびをかしげました。
「うちのチームに、十八番って、いたっけ?」
「どうだったかな…」
「ま、なんでもいいや。じつは、たのみがあるんだ」
キャプテンらしき少年が、レオのかたをつかんできました。
「明日の試合に、出てくれないか? うちのショートのやつが、ねつを出しちゃってさ」
「き、きゅうに言われても…。おれが出たって、かてるかどうかわかんないし…」
レオはあとずさりしながら、こころの中でつけたしました。
『どう見ても、あんまり強そうなチームじゃないし…』
するとキャプテンが、ニッコリわらって言いました。
「かてなくったっていいんだ。思いっきり、プレーできれば」
「えっ?」
レオは、ギョッとしました。
お父さんが聞いたら、なんと言うでしょう。
きっと、おこり出すにちがいありません。
「力いっぱいがんばれば、気もちいいだろ?」
「やっぱスポーツは、たのしまなくちゃ」
ほかのみんなも、わらいかけてきました。
レオのこころに、小さなほのおがともりました。
「おれでよければ」
「よし、きまり!」
レオは、コーチのところへつれていかれ、やさしくかたをたたかれました。
「よろしくな」
秋の日ぐれは、こより川のグラウンドにも、かけ足でやってきました。
人がめっきりへって、風はつめたくなり、川の音がゴオゴオと、耳につくようになりました。