冗談じゃない。太郎はときどきこんなずれたことを恥ずかしげもなく言う。太郎は「告白」という言葉に全身全霊をかけたかのように、唇をぎゅっと噛みしめ、ぼくを睨み付けた。
「しょうがねえな」
「ほ、本当か」
「まだ何もいいなんて言っちゃいないよ」
「頼む」
「ああ、何とか話してみるけどな」
「久志が手伝ってくれるんなら。大丈夫だよな」
「でもな、そんなこと言っても、あいつ爆笑するだけだぜ」
「大丈夫だよ。真剣に言えば分かってくれるよ」
こんな脳天気な話にはうんざりする。
「じゃあ、お前が真剣にお願いすればいいだろ」
「できないから頼んでるんだろ」と手を合わせた。
「ああ」
仕方なく、ぼくは小さく頷いて見せた。
「本当! 協力してくれるんだね」
太郎の眼は涙ぐんでいた。
「でもな、何度も言うようだけど、あいつ、そういうところはドンカンだからな」
後の言葉を太郎はすでに聞いていなかった。
「ありがとう」
太郎はぼくの手を握りしめると、小躍りするように扉の向こうに消えた。ぼくはひとり、屋上に取り残された。