主犯という事で、懲役二年八カ月を言い渡された
禅の捜査協力によって、組織の販売ルートは一掃された。禅は主犯ではなかったが、剛史が罪を逃れるために主犯は禅だと証言した。
禅は反論せず認め、全ての罪を被った。そして販売組織の中心人物とされ、実刑判決を受けた。
初犯という事もあったのだが、大麻の量、暴力団組織との癒着、その資金源の調達、そして事件の主犯という事で、懲役二年八カ月を言い渡された。禅は塀の中で、もう一度自分を見つめ直し悔い改め、人生をリセットし、新しくやり直す決意を固めた。
そんな時だった。父が倒れたという知らせが届いた。元々不景気の煽りを受け、会社の経営が苦しかった。そんな中での、禅の逮捕が止(とど)めを刺した形となってしまった。
何とか一命はとりとめたが、半身不随という重症だった。禅は親不孝をした事と、見舞いに行けない自分を責めた。
“自分にできる事は何だ? そして何をやるべきか?”
それを考える時間は十分にあった。禅は出所したら父の会社を継いで、業績の悪化を立て直し、親孝行しようと考えた。
元々禅は真面目だった。ただのお人好しで世間知らず、そして頼まれると断れない性格で人を信じやすい……それだけだった。