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運命の出逢い

〝早く、彼女に会いたい……〟

純粋にそれだけだった。彼女の美しさ、そして全ての嫌な事を忘れさせてくれるような、あの笑顔……もちろん美しさはずば抜けている……しかし、その内に秘めた魅力……どう表現していいか分からないが、笑顔からにじみ出る純粋さと優しさ……つまり美しさと可愛さ、魅力と無邪気さの両方を兼ね備えている。

それは、禅にとって、人生を捨ててもいいと思えるほどだった。禅は呟いた。「どうかしているな……」苦笑すると、パソコンに向かった。社長室のドアが鳴った。

ノックして、事務員の女性が入ってきた。時計を見ると九時五十分だった。

「社長、お客様です」

十時に約束した、新しい取引会社が商談に来ていた。

「お通しして」

事務員は会釈すると客を迎えに行った。しばらくすると、男性二人が入ってきた。

「失礼します」

「どうぞ、おかけください」

そう言って挨拶すると、お互いに名刺を交換した。

そして、ソファーに座ると資料を出し、商談が始まった。話は和やかな雰囲気で進んでいった。しばらくすると禅は時計に目をやった。商談は順調だったが、禅は途中何度も時計に目をやっていた。

禅が余りにも時計を気にするので、先方の二人は不思議な顔をし、顔を見合わせた。

「社長、何かご予定でも?」

禅は、我に返るとマズいと思った。

「い、いや、そう言う訳では……」

禅は全く商談に集中出来なかった。商談の途中も相手の話が全く耳に入らない。もはや頭の中は混乱していた。

「すみません……今日は体調が悪くて……」

先方の二人は顔を見合わせた。

「出直して来ましょうか?」

「いえ、大丈夫です」