俺は犯罪者…賢一は、こんな俺をどう思うだろうか?

「すごい量だな、どこかに流すのか?」

もちろん、その質問は誘導尋問だった。もはや警視庁は、その販売ルートを把握し内偵していた。

禅は隠し立てする事も無く、素直に捜査に協力した。捜査している刑事たちを見つめながら禅は考えていた。

“これから、どうなってしまうのか? 家族の事、友人の事……そして、なぜこうなってしまったのか?”

その答えは……? 華々しく輝いていた学生時代……しかし、バスケットを失ってから転がり落ちるように転落していった。

“俺にはバスケしか無かった……”

そう思うと、また涙が溢れ出てきた。冷静に考えると、今の禅の周りには、本当の友達はいなかった。友達と思っている、そのほとんどが禅と一緒にマリファナを扱う者か、その金に群がる者だった。

昔はこうではなかった。バスケットに打ち込んでいる時は、その仲間たちと夢を語っていた。

「お前夢はあるのか?」
「俺は頑張ってプロリーグに行くよ」
「行けるのか?」
「まあな、もっと努力しないと……禅、お前はどうするんだ?」
「俺か? そうだな……」
「お前ならアメリカでもやれるんじゃないか? そう、アメリカのプロで!」
「アメリカのプロ? それは無理だろ」

そう言って笑う禅に仲間が言った。

「お前ならやれると思うよ、お前は俺たちとは違う物を持っているからな、まあ、お互いにもっと努力して上を目指そう」
「そうだな」

昔は、そんな仲間たちと、練習に励んだ。

“俺は何をやっているんだ……?”

禅は自分が底辺に居るから、底辺に居る人間が集まってきている事に気が付かされた。それを一番感じさせたのが、剛史との付き合いだった。