「大麻取締法違反容疑で家宅捜査する!」
竹田にまとめて物を流すようになってからは、ネットのサイトを削除し、個人販売を止めていた。そんなある日、一人の男が店に現れた。
「すみません、葉っぱ……売ってもらえないですか?」
いつもは、ほとんど店を開けない禅だが、この日は空気の入れ替えをしようと店を開けていた。その男は以前、二回ほどマリファナを買いに来た男だった。禅は面倒臭いと思った。
「もう売ってはいないんですよ」
「そうですか……」
男はうな垂れたが、それでもと顔を上げた。
「在庫は無いですか?」
マリファナはあった。数日後に竹田に渡す大量のマリファナが……しかし、それを売る訳にも行かない。禅は困った。
「本当に無いんですよ」
「そうですか……」
男は、またうな垂れた。禅はその男が気の毒に思えた。禅は、ふと思い出した。昨日の夜吸っていた、吸いかけのマリファナがポケットの中にある事を……それをポケットから取り出した。
「吸いかけだけど、これで良ければ譲りますよ」
「本当ですか!」
「ええ」
男は嬉しそうな顔をし、ポケットに手を入れた。
「いくらですか?」
「いや、吸いかけだから、お金は要らないです」