全てを話し、会社を立て直す決意を語った。
「お兄ちゃん、大丈夫かな?」
禅より二歳年下の妹の咲は、中学一年生の時、三年生に禅がいた。その頃の禅は学校でヒーローだった。
彼女の中の兄のイメージは、学校中の誰もがうらやむ、スターだった頃のイメージだった。その兄が転落していく姿は、見るに堪えないものがあった。
母は呟いた。
「あの子は大丈夫、学生時代も誰よりも努力していたから……」
母は禅が、学生時代バスケットで、人より努力していた事を一番理解していた。だからそう言い切れた。
次の日、禅は父の会社の従業員たちの前に立っていた。そして社長である父が倒れた事、自分の犯した罪の事、全てを話し、それを悔い改め会社を立て直す決意を語った。
「新社長、頑張りましょう!」
「私たちも頑張りますから!」
従業員たちは、新社長の禅を温かく迎え入れてくれた。禅は思わず涙を流した。
「みんな、ありがとう、ありがとうございます」
そう言って頭を下げた。禅は父が座っていた社長の椅子に座ると書類に目を通した。会社の業績は最悪だった。父が倒れてから、会社を引っ張って行くという人間がいなかった。
それは、会社の体制にあった。前社長であった父が、古くから付き合いのある会社とのつながりを大切にし、固い絆の下で会社を賄ってきた。そんな父の口癖はこうだった。