俳句・短歌 短歌 故郷 2021.01.22 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第37回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 春間近満ち潮如き日照の さざ波寄せる昼下がり哉 呑川の緑藻の流れ柔らかく 緩やかにして穏やかに哉 大蜻蛉世界遺産の泰山で 産卵してる奇跡観る哉
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『猫の雨傘と僕のいる場所』 【第2回】 倉澤 兎 職場の人間関係(特に女性)に疲れ、四年ほど勤めた会社に辞表を提出した 紀伊半島を巡る「紀勢本線」が全線開通したのは意外と遅い。昭和三十八年で、僕が生まれて二年後のことである。小学生の頃には、「DD51」と呼ばれるディーゼル機関車が客車両を牽引していた。この機関車が牽引する青や茶色の貨物車両の長い重連が、山間(やまあい)の木々の間を縫って敷設された路線の上を走行していく。その姿を小学校の二階にある図書室の窓から眺めることができた。「佑君。また汽車眺めているん。どこが…