田畑さん
「おいおい、そこの君たち~」
突然声をかけられて、アッキーはまだ帰らないのかと、𠮟られるのかと思って振り返った。だが、そこにはにこにこと小さな目をなお一層細くして笑っている嬉しそうな紳士がいた。年齢は幾つなのかアッキーとひまりには全く想像がつかなかった。
お兄ちゃんでもなくて、おじいちゃんではあまりにも失礼だが、頭のてっぺんは髪が薄くバーコードの様でもあった。自分達以上の年齢の予測はゼロに等しい。
「喉が渇いてるのかい?」知らない人から突然そんな事を言われても不気味に思うだけだ。アッキーはひまりをかばうようにして、『ずずずっ』と三歩、後ずさりした。
「アッキーママと知り合いです。田畑と申します。怖がらないでいいよ。僕はここで診察を待っているんだ」
田畑さんは一気に話すと、アッキーの陰に隠れているひまりには、こんにちはの代わりに深々と頭を下げてお辞儀をした。