おんぶ
「今日はどうぞお帰りください」
眼鏡をかけた女性の口調は事務的で冷たかった。アッキーの頭の中は一瞬、パニック状態になりそうだった。
面会謝絶という言葉は聞いたことがないが、お帰りくださいと言われたのだ。アッキーママと面会出来ないことは確かなのだ。だが、『謝絶』の意味がまったく理解できなかった。ひまりも同じである。
眼鏡をかけた女性にアッキーは食ってかかり、叫ぶような大きな声で、「会わせてください。お願いします。手紙を持ってきました」
叫ぶようなアッキーの声は病院内のロビーに響き渡り、まわりの人達はしげしげと二人を訝しげに見た。
そしてまた、「なんで会えないのですか? 教えてください」「面会謝絶の理由はお伝え出来ません。どうぞ、今日のところはお帰りください」「手紙を書いてきました、それだけでも渡してくれませんか?お願いします」
アッキーも食い下がらない、必死である。このままでは帰れない。
「お手紙はお預かり出来ません。規則になっています」親切で優しそうな第一印象の眼鏡をかけた女性は、口もとだけが微笑んでいるが、レンズ越しの目は二人を睨んでいるようである。眼鏡をかけた女性は、再びドアの中へと消えてしまった。
そして、背の高い男性は無表情で二人にこう言ったのだった。