「こいつらはいつも、人間に見てほしくてたまらないんだ。ここよ、ここよ、こっちを見てって、さんざんアピールしてくるんだ」
「ア…アピール?」
「そうだよ。だけど人間は、ちっとも気づかないんだ」

ヒロユキは、そう言いながら、足もとのカタバミを見つめました。とたんにカタバミは、だれもふれていないのに、ピンピンたねをとばしはじめました。

「きみは、草花の気もちがわかるの?」

ヤマトは、ポカンとあいた口が、ふさがりません。

「わかるよ。たとえば、この花…」

ヒロユキは、こんどはツユクサを、じっと見つめました。するとツユクサは、青いふたつの花びらを、ピラピラふりはじめたのです。

「こいつ、じぶんにはネズミみたいな耳があるよって、じまんしてる」

ヒロユキが、クスクスわらいながら言いました。

「ぼくは、いつもこいつらを、ちゃんと見てあげるんだ」

ヤマトは、うごいている草花とヒロユキに、すっかり見とれてしまいました。