エッセイ 日本画 2020.12.22 その一言を吐くために、どれほどの勇気がいったことか 身体中の痛みの中 身体中の痛みの中 「美智子 もう日記も書けなくなった」 その一言を吐くために どれほどの勇気がいったことか そこまで かあさんは病んでいたのに… ゆったり 手を差しのべることができなかった 写真を拡大 「月光爽緑」 かあさんに死なれて 今はじめて かあさんに出会い 向きあってるよ 大きな大きな ふところへ 写真を拡大 「春風香」
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『彼のために人を焼く』 【第14回】 暮山 からす 一様に目撃者が証言する「ツキシマツバサ」この火事は事故なのか事件なのか? 「そうだ、その人叫んでいました」「叫んでいた?」「ええ。ツキシマツバサがどうとか」「ツキシマツバサ?」顔を曇らせた。行沢は聞いた名前をメモに取っている。「その名前に心当たりはありますか」「いいえ。知りません」それから通報者に何点か話を聞いたが、特段おかしな様子はなかった。他の住民も同じような証言だった。矛盾点や食い違いは見られない。みな一様にツキシマツバサという名前を聞いているが、その存在は知ら…