俳句・短歌 句集 母娘 2020.12.21 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第41回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 くりの実のはぜてころげて巣立ちかな 清い瞳の みほとけたちの愛ただ愛 四十すぎ母は敵だよ味方だよ
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『巨大鯨の水飛沫 』 【第2回】 喜田村 星澄 おばあちゃんがシロナガスクジラはいつ帰ってくるのかとしきりに聞いてきて… 「お母さん、お世話になります」お父さんがおばあちゃんに喋りかけた。何やら大人たちが喋り始めたとき、私は懐かしく部屋を見てまわる。そうしたら、そこに雑誌の切り抜きと思われる鯨の写真が、その雑さや粗さのままに貼られているのを見つけた。お母さんの声がふと耳に入る。「かあさん、この鯨は?」(鯨?)おばあちゃんに鯨なんて、全く縁がないように思う。おじいちゃんが漁師だったわけではない。建築関係に勤めていたと…