「そうしたら女性の絵が二点、売れてしまった?」

「ええそうなんです。でもその後がいけません。それから半年間、一点も買い手がつきませんでした。実は私、このギャラリーのオーナーではありませんで、はい、今回のように私の判断で飛び込みの画家の絵を購入して、半年間も売れないとなると困るのですよ。

そこで、同じ画廊協会に加盟しているお店の中から、ポルトで最も羽振りの良いロドア画廊さんを選びましてね、面白い絵を手に入れたのでと話を持ちかけました。二週間前のことです。社長さんにお見せして、仲間相場で引き取っていただいたという次第なのです」

「ありがとうございました、それで大体分かりました。宗像さん、これでふりだしに戻りましたね。ニューヨークのロイヤル・マディソン・ギャラリーさんにはロンドンに帰ってからお尋ねするとしても、これからどうしましょうか?」

エリザベスから軽い溜め息が漏れた。コインブラまで来て、はっきりとした手がかりが得られなかったことに落胆したようだった。

しかしその時、宗像はポルトのロドア画廊での、どたばた騒ぎで重要なことをすっかり忘れていたことに気がついた。ロンドンのギャラリー・エステで、コジモから渡された例の黄封筒である。

慌ててカバンから一枚の写真を取り出し、エリザベスに差し出したのだった。