「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」​三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。

認知症の鑑別診断~少ないが、予防・治療可能な認知症がある~

特発性正常圧水頭症とは?

水頭症といえば、小児の疾患として知られていますが、大人でもみられます。成人の水頭症の原因で一番多いのが、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に起こる二次的な続発性水頭症ですが、これは頭蓋内の髄液循環や吸収への障害により、その中に過剰の髄液がたまり、脳室が拡大することで発症します。

しかし、水頭症の中には、このようなはっきりとした原因もなく、特徴的な3つの症状(もの忘れ、歩行困難、尿失禁)が、6カ月~1年の間に進行するものがあります。

また、頭部検査にて脳室拡大がみられるものの、障害が起きても髄液圧(頭蓋内圧)は正常値を示している水頭症もあり、これを、特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus:iNPH)といいます。

原因はまだ不明ですが、何らかの原因で脳の中の髄液が過剰となってしまい、脳そのものを圧迫してしまうことで発症します。最近では細胞間隙液の流れが注目されているようです。各種の調査では男女差はなく、認知症患者さんの5%といわれています。

脳は、硬い頭蓋骨と硬膜で守られており、その中にある髄液に浮かんでいる状態です。髄液は脳室(脳の中心部)で作られ、脳内から脊髄の先までを循環し、最終的には脳の表面で吸収されるようになっています。

しかし何らかの原因でこの循環システムが正常に働かなくなると、作り出される髄液と吸収される髄液とのバランスが崩れ、髄液が過剰になってしまいます。これが水頭症です。

特発性正常圧水頭症の診断は、MRIやCTなどの画像検査で行いますが、脳室が拡がっていることが分かります。