Chapter7 失脚
林は二人の間に座り、木の実を食べた。ユヒトが板の盆に椀を三つ載せて持ってきた。
もうもうと湯気が上がっている。長老の薬だと言う。口に含むと熱くて苦い。
だが、心づくしの薬である。我慢して飲んだ。
かすかに痛みが和らいだような気がする。酒かと思ったが酔い心地はしないので、麻酔的な何かなのだろう。
三人が涙を浮かべて会話をするのを、ユヒトは離れたところから見ていた。話が落ち着いた頃、ユヒトは近づいて言った。
「何があったのか、そろそろ話してくれないか」
岩崎と岸谷は林を見た。林はしばらく間を置き
「ぼくら三人、過って崖から落ちたんだ」
淡々と言った。
「それはおかしい」
ユヒトは眉をひそめた。
「いくらなんでも三人で一緒に落ちるかい? それに、あの崖は見晴らしがいい」
「夜中に落ちたのさ」
「なおさらおかしい。きみたちだって、夜にあそこに行くのが危ないことは分かっているだろう」
岩崎と岸谷は黙っている。
「とにかく、落ちたんだ」
林は調子を変えずに言った。ユヒトは訝しい目をしていたが、少し考え、
「今のきみたちの身体では、すぐにはササミダイラに帰れないと思うよ。ぼくがきみたちのことを伝えてあげよう。そうしないと、きみたちの仲間が心配する」
「それは待って」
林は制した。実は、今、三人が話し合っていたのはまさにこのことだった。早坂・沼田の二人は、三人が死んだと思っている。