Chapter7 失脚
冷え込みの厳しい昼日中、笹見平では若者たちが黙々と作業に取り掛かっていた。
塀工事は長らく手を付けられず、足場に雪が積もっている。そのかわり畑の畔道と川の周辺は雪が除けられ、踏み固められている。狩りに向かう男子の列。畑に並ぶ女子の列。吐く息が白くもうもうと上がって薄灰色の大気に溶けていく。
林・岩崎・岸谷が忽然と姿を消してすでに一週間が経っていた。
――三人はどこに行ったのかしら。
泉は浅間山の煙を見てため息した。
『もう生きてはいないだろ』
頭の中で盛江のセリフが繰り返される。『獣に喰われたか、雪で凍え死んだか。飢えて死んだか。そのどれかだよ』
泉は盛江の言葉を薄情とは思わなかった。いくら探しても見つからない仲間への未練を断ち切るために、自分に言い聞かせているようだった。冬の縄文時代は手厳しい。情にほだされている暇はない。
三人の行方については、いろいろと憶測が飛び交った。「どうして三人一緒にいなくなったんでしょう?」川田は大学生らに訊ねた。「冬の夜に出歩くなんて現代でも危ない。一体どこに何の用があったんでしょう?」
「誰かに呼び出されたのではないか?」砂川が言った。
「誰からです」
「分からん――そんな気がしたまでだ」
「誰かを想像してそう言ったんですよね。言ってください」
「言えるかよ。俺が消されるかもしれない」