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留守中の惨事
――奴らは次、いつ襲ってくるか。明日か、今夜か――。
強盗のことを考えると、夜もおちおち眠れない。
笹見平の若者たちは、観光案内所に退避した時の恐怖を鮮明に覚えている。中学生の中には、思い出しただけで震えが起こる者、涙が止まらなくなる者もいる。
林は考えた。ぼくたちはこの恐怖を永遠に抱えてはいられない。どんな形であれ、解決しなくては。ある晩、林は大学生と中学生リーダーを集めて会議を開いた。絶え間ない恐怖とこれからの平和のために、一体何が必要か。それをみんなに問うたのである。
みんなから出た意見は主に三つだった。
「強盗団を見つけ出して仕返しをしようぜ」
最初の意見『報復論』は盛江が述べた。
「善は善、悪は悪。白黒をはっきりさせるんだ」
「私たちに仕返しする力なんてないわ」
泉は諌めた。
だが
「なあに、貨幣で他の集落の力を借りればいい。よそだって強盗団を野放しにしとくのは嫌だろうから、きっと手を貸すよ」
「お金だけ出して自分たちはどうするの?」
「うーん……」
盛江が答えに窮していると、
「報復については慎重でありたいが――」
岩崎が二つ目の意見『武装論』を述べた。
「俺たちが武装する必要はあると思う。刀や槍、弓矢を揃えて訓練し、敵襲に備えるんだ」
「かえって周りを刺激しないか?」
岸谷が言った。
「あくまで配備だ。現代にもあっただろ。核の抑止力みたいなこと。俺たちに手を出したら危ないってことを、広く知らしめるんだよ」
三つ目の意見は木崎だった。彼女は報復にも武装にも反対し、
「私たちが暴力反対の集まりで、武装しない平和主義者だってことをアピールしたらどう?」
という『平和論』を打ち出した。
「そんなことをアピールして、逆に攻められ放題にならないか?」
盛江は訝しがった。
「そもそもどうやって武器を持ってないことを知らせるんだ?」
と岩崎。木崎は男たちの意見を振りきり、