生きてイマイ村にいると知られたら、とどめを刺しに来るかもしれない。怪我をしている今、襲われたらひとたまりもない。それに、自分たちが仲間に殺されかけた事実が笹見平の全員に伝わったら、大混乱に陥るのは目に見えている。
「ユヒト、しばらくぼくたち三人のことは秘密にしていてほしい」
「やっぱり何かあったんだね?」
ユヒトはため息をついた。
「うすうす感じてはいたんだ。もしやとは思うけど――きみたちの集落は仲違いしているんだろ? たぶんハヤサカとヌマタが」
「言えないよ!」
林はユヒトの言葉をさえぎった。
「……ごめん。言えないんじゃない。言うのが怖いんだ。今ここでぼくたちが何かを答えてしまうと、物事がそれで決まってしまいそうで怖いんだ」
林の目に涙が浮かんでいた。ユヒトは黙っていた。
「ぼくらのしょうもないことに巻き込んでしまって悪い」
林は申し訳なさそうに唇をかんだ。
「巻き込まれたなんて思っていない」
ユヒトは頭を横に振った。
「ぼくに出来ることがあるなら何でも言ってよ」
「じゃあ……一つだけ甘えてもいいかな。手紙を書くから、泉に渡してほしい。彼女にはぼくらがここにいることを伝えたい」
「分かった」
ユヒトはうなずいた。
「でもどうしてイズミなの?」
「彼女が一番、物事をうまく進める方法を知っていると思うんだ。きみは狩りの途中で立ち寄った感じで、笹見平に行ってほしい」
「わかった」
ユヒトはうなずいた。