第2章 医師は認知症をどのように診断するのか?
◎機能画像診断のためのSPECTとPET
アルツハイマー型認知症では側頭頭頂葉連合野の代謝低下がみられます。ブドウ糖取込の度合いが記憶や理解力に関係する部位で低下するのがこの病気の特徴です。
我が国における医薬品FDGは、FDG-PETが保険適用された2002年から3年後の2005年に製造承認されて供給が開始されました。これにより、サイクロトロンを持たず医薬品FDGを使用してPET検査を行う施設、いわゆるデリバリーPET施設が急増して、2013年には170施設を超えており、国内PET市場の成長ドライバーとなっています。
最近、アミロイドβ蛋白(Aβ)に集積するF-18やC-11のようなPETで利用する放射性核種で標識しておき、投与された薬剤の集積部位をPETで非侵襲的に検出して脳内のAβ蓄積量を画像化するアミロイドイメージングについてADの早期診断に向けての臨床研究が展開されています。
SPECTはPETに比べて画像解像度では劣りますが、各種の費用が安く(保険適用が多い)、標識できる各種の薬剤によりPETよりも診断できるものも多く、施設的な制限もないなどの理由で、広く施行されていています。SPECTは特に脳血流の描出に利用されています。
PETは画像解像度では良いが、FDGが極短半減期であるためサイクロトロンの併設が必要であり、施設的な制限があるので、SPECTほど一般的には行われていません。
日本ではPETの臨床研究が進むなか、一般的にはSPECTによる脳血流測定が診断に広く用いられています。PETは特に脳の代謝機能の描出に利用されます(最近FDGについてはメーカー供給が可能となっています)。