俳句・短歌 短歌 2020.11.29 歌集「祈り」より三首 歌集 祈り 【第6回】 佐藤 彰子 ―ああだから月はみんなに愛されるんだ自分ひとりを見てる気がする― 夜明けに人知れずそっと咲く花のように、 それでいいんだよ、と許してくれるような、 自分のかわりに、幸せを願ってくれるような。 心に灯りをともす、優しくあたたかな短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 「がんばって」鸚鵡返しに母の言うかすかに掌握り返して わたくしはここより生まれてきたような小さく柔らかな母の掌 病む母に底力あり鏡台の前にてお化けの真似して笑う
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『ヒミツのレクイエム』 【第20回】 氷満 圭一郎 自分は特別な使命を持っているんだ!…と友達に話したらヤバイ奴扱いされた…。 その日記は、十八歳の時、一九九八年の十月から書き始められ、その後数年間ほど付けられていたが、こまめに書いているのは最初の二年ほどで、次第に時々思い出したように記されるばかりとなり、しまいにフェードアウトし書くのをやめてしまった、という軌跡をたどっている。書きはじめの当時は高校三年、大学の受験勉強の真っ只中で、こんなことをしていて何になるという疑問から、人生への懐疑を日記に記すようになったようだ。…