四角いソフトクリームを作る機械の横には、おじちゃんが椅子に座って居眠りをしていた。アッキーと浩司が近づいて行くと驚いて目を覚ました様子だった。
浩司は迷うこともなく『バニラ、お願いします』と言った。アッキーは数秒考えたが抹茶にした。
おじちゃんが機械のレバーの下に、ソフトクリームのコーンを持つと器用に動かし始めた。ぐるり、ぐるり、ちょんと、浩司のバニラのソフトクリームは出来上がった。次にアッキーの抹茶のソフトクリームも出来上がった。少し不愛想なおじちゃんだが、寄り道するには案外といい所だとアッキーは思いながら抹茶のソフトクリームを食べていた。
それはそうとアッキーはひまりの事が、いつも頭の中のどこかにあったのだった。教室で『やあ!』と何度か声を掛けるのだが、いつも軽く会釈をしてくれるだけで会話はまったく無い。コンサートの帰りに野中マンションの前で見せた笑顔はどこにいってしまったのだろう。
トイレに駆け込み『にたぁ~』としたアッキーは、どうすればいいのか自問自答していた。ひまりと話す機会は無く、しばらく時が過ぎていった。
だが、その日は突然やって来た。アッキーはサッカーの部活動が休みで、勝田台駅までの途中にある村上団地の中をひとり歩いて帰る途中だった。
村上団地の周辺は緑が多く、季節ごとに花壇に綺麗な花が咲き、春には団地のあちこちの桜も見事に花開いた。家族連れなどが桜の下でシートを敷き、お弁当を食べている光景もよく見られた。水遊び場も所どころ点在しており、夏には小さな子供が歓声をあげるのだった。