第2章 補助金の論理
2 補助金の必要性、正当性
司法の国アメリカ、行政の国日本
藤田は、日本では行政裁判所はなくなってアメリカ型になったように見えるが、日本の行政訴訟制度は実はアメリカよりドイツ、フランスに近いと言っているのだ。行政訴訟に限らず、日本の法体系は英米法と大陸法の混じりあった独特の体系だ。
アメリカの大統領の前職を調べてみると、司法優先の国であるから弁護士であった人が多い。歴代の大統領44人のうち26人が、つまり半数以上が弁護士である。最近の大統領ではクリントンやオバマが弁護士であった。
これに対して、行政国家フランスの大統領はフランス国立行政学院というエリート官僚の養成校出身者が多い。第五共和制になってから、つまりフランス国民の投票による直接選挙で選ばれた大統領のうち、ド・ゴールは軍人で次のポンピドーは教員であったが、その後の大統領、ジスカール・デスタン、シラク、オランド、マクロンは、つまりミッテランとサルコジ以外は行政学院出身者である。
日本はどうかというと、歴代の内閣総理大臣で弁護士であったのは片山哲と鳩山一郎の二人だけだ。あとは軍人か官僚、二世、職業政治家である。
このように、国のトップを見ても日本はアメリカとフランスの間だ。日本はアメリカのような徹底した司法優先の国でもなければ、フランスのような徹底した行政国家でもない。
補助金は行政的なもので、補助金と行政はほぼイコールである。日本で補助金をめぐる問題がしばしば取沙汰されるのは、いちおうは行政国家でありながら司法国家であるアメリカの考え方が一部取り入れられているからだ。
アメリカ人であるシャウプは、補助金は原則廃止だとした。おそらくシャウプはアメリカの社会経済システムが最良だと思っていた。ドッジもそうであったと思う。ドッジは銀行家でシャウプは学者という違いはあるにしても、二人とも自分たちのやり方がベストだと思っている。