第2章 補助金の論理
1 定義と分類
この章では、補助金は整理できるのか、補助金が支出される妥当性はあるのかなどの問題について述べていくつもりであるが、その前にこれから取り扱う補助金のカテゴリーを明確にしておきたい。
まず、非常におおまかな補助金の定義をしておく。経済学辞典や補助金についての本に記述されている補助金の定義をまとめてみるとだいたい次のようになるだろう。
国または地方公共団体が、一定の行政目的を達成するため、公共団体、経済団体、企業、私人に対して、反対給付を受けることなく、一方的に支出する現金給付をいう。
法令または予算で補助金と呼ばれているものが補助金である、と言ってしまえば簡単だが、補助金と呼ばれていなくても、例えば「〇〇補給金」や「〇〇奨励金」、「〇〇交付金」など、どう見ても補助金と呼ばれているものとまったく同じものが多数存在するので、このように定義せざるをえないことになる。
もう一つやっかいなのは「反対給付を受けることなく、一方的に支出する」をどう見るかだ。
例えば、国庫支出金は国から見れば補助金であるが、受け取るほうの地方公共団体がその補助金を支出する立場でみれば、ほとんどは非移転的支出なので補助金とはいえなくなる。「移転支出」あるいは「移転的支出」は財政学でよく使用される用語だ。イギリスの経済学者ピグーが財政支出を、反対給付を受けない年金や補助金のような支出を「移転支出」、反対給付を受ける支出を「非移転支出」と区別した。
地方公共団体の側からすれば非移転的支出だという例を挙げよう。