第2章 補助金の論理

2 補助金の必要性、正当性​

司法の国アメリカ、行政の国日本

アメリカの破産法には第9条に地方自治体の破産の規定があり、アメリカの地方自治体は企業と同じように破産できる。日本の破産法や会社整理法が対象としているのは個人や企業であって地方自治体は含まれていないので、日本の地方自治体は破産できないのだ。

ただし、地方自治体が破産できるのはアメリカだけであって、他のどこの国にも地方自治体の破産制度はない。アメリカが特殊なのだ。

日本では地方自治体の財政が厳しくなると、準用財政再建団体となって総務大臣の下で、つまり行政的手法で再建が進められるが、アメリカでは破産法第9条の規定に基づき裁判所の下で、つまり司法的手法で再建が進められる。アメリカは徹底した司法優先の国である。

それはアメリカという国の成り立ちによるものだと法学者・阿川尚之は言う。彼は『世界標準で生きられますか』(徳間書店 1999年)の「問題が起こる前に行政府が裁量を働かす日本と、事後に法的処理をするアメリカ」というセクションでこう述べている。

《要するに問題が起こらないように予めさまざまな配慮をして法律をつくるのが行政を中心とする日本のシステムで、何でもやらせておいて、もし問題があったら後で処理するのが司法を中心とするアメリカのシステムだと。

そういう違いは、国の成り立ちと非常に関係があります。日本の場合は、明治維新のときに、欧米で国民国家という新しいタイプの国がかなり完成していたため、何が何でも同様の体制にしなければと、あわてて列強先進国にならった中央集権的な国づくりをやった。国づくりもキャッチアップだったわけです。

とにかく必死になって中央政府をつくった。本当に機能するかどうかは別問題だったから、うまくいかないすき間の部分は全部官僚の裁量で決めていったのが日本ですね。

これに対してアメリカは、裁判所やタウンミーティングなど地方地方の自治から出発して、そこでは解決できない問題をだんだん中央に移していった。そういう国の成立の仕方の違いがあるような気がします。》