ただし、これはあくまで緊急措置。キリスト教徒にも関わらず2人ともトイレ掃除・靴磨きなどのスウィーパーの仕事には絶対に手を出さなかった。住んでいたのがアパートだったので雇い人は3人で済んだが、一戸建てだったらこの他に門番・庭師を雇わねばならない。
公式には廃止されたとされるカーストが残っているだけでなく、アウトカースト(ダリット=抑圧された人々)といわれる階層もある。スードラや生来のカーストから逃げ出したり追放されたりした人たちである。
彼らは二千年以上も上位カーストから迫害、搾取されてきて、建国の父マハトマ・ガンジーから「神の子」と呼ばれて復権を図られた。しかしながら、いくら政府がカースト制度は廃止されたと言っても実際には残っている。現在は一般的にはスケジュールド・カーストという呼び名になっていて、周囲の見方は変わらず、カースト外として蔑視されている。
これ以外にもカーストに属さない少数民族がかなりの数になる。政府はこれらの被抑圧階層を優遇するため、国立大学の学生や官公庁・議員の職につき一定の枠を彼らに優先的に与えている。
この階層はインド全人口の20%を超えるといわれている。実数が不明なインドの人口ではあるが、政府発表の10億人としても実に2億人以上になる。
一方、中・上位カーストの人々は「スケジュールド・カーストは成績が悪いのに大学に入ったり、能力がないのに官庁に勤めたりと逆差別だ」とボヤいている。反対に、低位カーストは、この優遇枠を広げるべきだと主張するし、公に認定されていない少数部族は優遇枠の対象にしろと要求して、厳しく対立している。
カーストといっても、江戸時代に日本でもあった士農工商などとは比べものにならないほど多く、複雑で錯綜している。