第5章 社会人に求められる能力とは
自覚のドミノ
社会人基礎力の3つのカテゴリーのうち、思考力と行動力の関係についてもう少し詳しく考えてみます。
既述しましたように行動力はそれ自体で機能しません。行動のもととなるのが思考です。人は思考力がなければ行動しません。行動力を身につけた人が少ないのは、思考力が行動をかき立てる力になっていないからです。
企業で働く人たちは知識を身につけることに積極的であっても、それを行動につなげようとする際、消極的になるという現象が至るところで見られます。「指示待ち」という言葉に代表される人たちです。これは企業にとって深刻な問題です。どのようにしたら乗り越えられるのでしょうか。
人の資産を豊かにするためにはあることに気づかなければなりません。人が成長するには知識を得たのち、それを行動に結びつける必要があります。そうしなければ力にはなりません。「学ぶ」という言葉から、それが知識の習得を意味すると考える人も多いのですが、ビジネス社会では知識だけでは会社を変えることはできません。
では、行動に駆り立てる知識とは何でしょう。それは言葉です。
人は自覚を促す言葉に出合えなければ行動を起こすことができません。私は常にこのプロセスを大切にし人材を育ててきました。
例えば、「君は行動力に乏しい」「もっと行動力をつけなさい」と一方的な言葉をかけても、行動力が生まれることはありません。また教えられても成長する人としない人に分かれます。この差は何か。それは自覚です。
業績が落ち込み、改革をしなければ会社の明日がないということがわかっていても動かない人が大半です。そうした人たちを動かすのが自覚を促す言葉なのです。
例えば「まず自分ができることからやろう」という言葉をかけたとします。「会社の明日がない」と言われても漠然としていて実感できないかもしれませんが、「まず自分ができることからやろう」という具体的な言葉にめぐり合えれば動き出すことができるかもしれません。