「はいはい」
晴はふっと息をつくとコロッと変わって、
「ああ、お腹がすいたー。あっ、きんつば、ちょうだいね」
いつものことだが、少女たちは笑い転げた。晴はきんつばを頰張りながら
「ところで、私たち雑誌を出すことにしたのよ」と、真顔になって言う。
「雑誌?」
晴からこんな言葉が出るなんて思わなかった。美津は晴の顔を見た。相変わらずいたずらっ子の、何かを企む顔だ。
「自分たちが考えていることや、思っていることを、文章や歌や詩にするの」
「何か難しそうね」
「紅林先生も、寺田先生も参加してくれるのよ。力強いわよ。あなたも、むかしから綴り方は得意だって言ってたじゃない。短歌も国語の先生にほめられたし」
晴が美津を覗き込む。
「うん……今までに書いた詩もあるけど……」
「すごいじゃない……」
「ほんの雑誌の真似をしただけよ」
「ねー見せて、見せて」
晴がはしゃぐ。
「やっぱり、恥ずかしい」