第2章 障害のある子どもの理解
⑵注意欠如多動性障害(ADHD)
落ち着きのない子ども
ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は、1980(昭和55)年のDSM‐Ⅲにおいて「注意欠陥障害」の名称で登場しました。
その後、アメリカで生活をしてきた司馬理英子氏の造語で、日本で平成9(1997)年頃から「のび太・ジャイアン症候群」という言葉で一般に広まりました。
これは藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』に登場する、のび太とジャイアンは、どこにでもいるようないじめられっこ、いじめっこですが、ADHDの症状に似ており、その症状の出方により、不注意優位型(のび太型)、多動性―衝動性優位型(ジャイアン型)、混合型の3つの型に分類されるということでのネーミングでした。
一方、全米ではサリ・ソルデン著“Women with Attention Deficit Disorder”(日本語訳では『片づけられない女たち』(ニキ・リンコ訳、WAVE出版、2000年)という本がベストセラーとなっていました。
この障害はかつて、PDD(広汎性発達障害)、MBD(微細脳損傷)といわれていたものです。また、DSM‐5での日本語訳では、「注意欠如多動症」という表記を示しました。なるべく「障害」という烙スティグマ印な見方を薄めるようにと「~症」を併記したとされます。
そして、平成20(2008)年に日本精神神経学会はADHD用語の和訳を「欠陥」から「欠如」としました。