俳句・短歌 短歌 2020.11.01 歌集「祈り」より三首 歌集 祈り 【第2回】 佐藤 彰子 ―ああだから月はみんなに愛されるんだ自分ひとりを見てる気がする― 夜明けに人知れずそっと咲く花のように、 それでいいんだよ、と許してくれるような、 自分のかわりに、幸せを願ってくれるような。 心に灯りをともす、優しくあたたかな短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 降りしきる月の光を吸い込みぬいつしか涙滲みくるまで 「眠りゆく馬のため月存在す」そう思えくる絵画一枚 (坂本繁二郎「馬屋の月」) 満月のひかり降るらんふるさとに葉を閉じ眠る合歓の上にも
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『野球の子』 【第5回】 大藤 崇 父と僕を捨て、好きな男と出て行ってしまった母。「帰ってきてほしい」と伝えたくて… 僕は高校に入学した。入学と同時に、野球部に入部、甲子園大会で五連覇を達成した。ついでに国体も神宮大会も優勝。その年のドラフトでビッグ・キャッツから一位指名を受けて、プロ野球選手になった。あらゆるタイトルを独り占めし、ビッグ・キャッツを何度も日本一にした。そして、海を渡り、ニューヨーカーズに入団、世界一となった。というのは真っ赤な嘘で、本当なのは高校に入学した、ということだけだ。中学生まであんなに…