第1章 本書の重要事項

重要事項14 人類という生命体の性質

(06)五官を有する肉体を持ち、それにまつわる欲望や煩悩を持つ。

煩悩とは、(特に仏教においては、又他の宗教においてもそれなりに、つまり)宗教に一般であるように、否定されるべきものではなく、あるいは負のイメージで語るべきものでもなく、その逆に全面的に肯定されるべきものです。

なぜなら、煩悩こそが人間を人間として生かしているエネルギーの源そのものであり、善なるもので人間の至宝であるからです。従って、煩悩を滅却すれば人間は人間でなくなります。

しかし、この生命力は強力なものですから、さまざまにある煩悩の中の1つまたは複数の煩悩が突出して発動され他の多くの煩悩を圧迫・圧殺している時には不快を得ることになります。対して、数多ある全ての煩悩が適切にコントロールされ、それぞれの煩悩が適切に発動されている時に人は快を得ることになります。

全ての煩悩は高いエネルギーを持ちますが、それらのエネルギーのオーケストラは特定のエネルギーが他のエネルギーを圧迫・圧殺しないように、全てのエネルギーが調和した演奏をしなければなりません。

この調和が絶妙の時人は快(楽)を得、不調の時人は不快(苦)を得ることになります。これは何も深遠な思想ではありません。

調味料を例に採りますと、多くのものがいい加減に混じりあっている料理は美味ですが、例えば、砂糖と塩の一方が多かったり少なかったりすると不味い料理になることと同じです。