旧市街地(旧東京)との接続を考慮しつつ、適度な距離感で密集性のない都市構造が採用されている。また、洪水や津波といった災害リスクを避けるため、海沿いから20キロメートル以上離れたロケーションで建設されるなど、分散型・スマートシティとなっている。

旅慣れた彼女の荷物は小ぶりのスーツケース一つだけである。改札を顔認証で抜けると、ホームに下りた。日本にビジネスに来たと思われる外国人たちがリニアの到着を待っていた。

流線型のリニアが滑らかにホームに入ると、璃子は軽い足取りで乗り込み、窓側の席に座った。窓越しに見える景色がリニアのスピードが上がるにつれて忙しく移り変わっていく。窓越しから見える景色は音速を超えたスピードの前に大きく歪んでいく。

璃子は目をつぶって、AIが指令する最近のサプライチェーンについて考えた。

(情報ネットワークの進化は、物流のあり方を根本的に変えてしまった。

そして巨大なAI情報ネットワークはアメーバ的に日々進化している。本当に正しい道を進んでいるのかしら。この状況がいったい未来に何を引き起こすのだろう。もう人間に制御できないところまで来ているような気もする……。人類はいわゆるポイントオブノーリターンに差しかかっているんじゃないかしら)

実際、設備の保守や点検といった職業は消滅し、現役世代の働き手が大幅に減少したにもかかわらず2040年代には大量の失業者が発生していた。世の中で誰とはなしに言われるようになった「シン・物流革命」は、既存の流通関係労働者の血をもって利便性や効率を与えてくれたのでもある。

おかげでサプライチェーンの進化発展は目覚ましいものとなった。メーカーで生産された製品や、医薬品、生鮮食料品などは、すべて製造の際に超小型のRFID(電波を用いてデータを非接触で読み書きする技術)タグが装着され、タグで得られたデータは、トータルなAI情報ネットワークを介して、それらすべての最新のステータスが、巨大な物流クラウドに格納されている。

生産者も利用者も、手元のスマートフォンやPCからこの物流クラウドにアクセスすることにより、瞬時に製品の内容、位置情報や生産時期、賞味期限などを知ることができる。