【前回の記事を読む】「便利な物流改革」のはずが…AI物流センターで進んでいたのは、人間を監視・制御する実験で……
第1章 出し抜けの受注
2050年11月ネオ東京
道庭環奈の依頼を聞いた璃子は、警戒する本心とは反対に、にっこりと微笑んだあと、少し間をとってから答えた。
「面白い話ですが二つ返事では引き受けられないような気もします。このところ、スケジュールが詰まっていてかなり忙しくなっているんです。もちろん最新のAI『ロジマザー』のオペレーションとなれば、物流の専門家として興味がないわけではないのですが」
「ある程度、無理は承知でお願いしています。可能な限り荷宮さんのご都合に合わせるようにいたします」
環奈は丁寧に、しかし圧力を強めながら説得してきた。
「……それほどおっしゃるならば」
ただならぬ気迫を感じた璃子は、もはやここまでされると「いや」とは言いにくい。
「それじゃあとりあえず、来週にでもジャイラ本部でお会いしましょう」
「かしこまりました。ありがとうございます」
さきほどの切羽詰まった表情から一転、環奈の顔がぱっと明るくなった。よほどうれしかったのか、白い歯が見えた。
「それでは詳細はそのときに。私はこれからリニアで九州に移動なので」
セミナー会場をあとにして、「ネオ東京駅」に到着した璃子は、リニアモーターカーの乗り場に急ぎ足で向かった。ネオ東京――2040年代に相次いで発生した新型ウイルスによるパンデミックと超巨大化した自然災害からの防衛を念頭に千葉県の内陸広域に建設された未来都市だ。もともと平野が多く、開発しやすい地域であるため、計画的な都市設計が施され、首都機能も移転した。