正社員への道が未来を切りひらく

経済の先行きが不透明とはいえ、金融政策を中心とした経済政策で景気が回復、有効求人倍率が1.09倍(2014年5月「季節調整値」より/厚生労働省)となりました。これは21年11か月ぶりの高さといわれています。求人難から企業が労働者の囲い込みを行いはじめ、派遣社員や契約社員など非正規社員の正規化が進んでいます。

人を資産として育て上げようとする場合、派遣社員や契約社員と資産との関係について深く考えなければなりません。派遣社員や契約社員を企業の資産として育てることができるか、実は私は疑問があります。なぜなら派遣社員や契約社員は景気の波を見越したバッファとして活用されてきたからです。

先行きの見えない中で人材を抱えるのはリスクがあると考え、正社員を採用せず派遣社員や契約社員に依存する形の経営が長い間続いてきました。固定費のリスクを変動費で回避しようというのが狙いで、派遣社員や契約社員の雇用は明らかに人をコストとしてみなしています。

彼らは商品やサービスを生み出すための原材料として位置づけられています。机を並べ同じ仕事をしていても、経営管理者は派遣社員の能力を磨こうとはしないのです。これは構造がもたらす問題であって、個人の能力に原因があるわけではありません。

構造上の問題から、企業は派遣社員や契約社員に多大な教育時間を投資し資産として育て上げることはしないのです。

すでに述べましたように、もし全ての社員を正社員として価値ある教育機会を提供すれば大きな効果を得ることができます。しかし正社員のみに機会を提供し、派遣社員や契約社員にその機会を提供しなければ、彼らが成長することによって得られたであろう利益を失うことになります。

つまり、派遣社員や契約社員の人数分だけ未来力をつくり上げるための機会を損失したことになります。

景気の波へ対応するために派遣社員や契約社員に依存するのではなく、人を育て上げ、景気の波を乗り越える資産力をつけることこそ、人口減少社会、市場縮小社会にふさわしいあり方だといえます。