「……あのお医者さんが、透を手術するの?」
まさ子は手術室のドアを見つめながら呟いた。
「口は悪いが腕はいい、というドクターもいるよ」
幹雄が放ったその言葉は、まさ子を励ますというより、自分に言い聞かせるためのものだったかもしれない。
不意に、まさ子はジョンのことを思い出した。
「そうだ、おまわりさん。ジョンは、うちの犬はどこにいますか?」
「ワンちゃんは、大破したバイクの車体の一部が直撃して、絶命しました。重ねてお気の毒です」
「お巡りさん、お願いがあります」と幹雄が言った。
「なんでしょう」
「息子の容態が落ち着いたら必ず引き取りに行きますので、それまで亡骸を預かっておいてください。息子が可愛がっていた犬なので、ちゃんとしてやらないと」
まさ子も念を押した。
「そうです、絶対に捨てたりしないでください。ジョンは……透の身代わりになったのかもしれないんだから」
まさ子は透の手を握った。
(大丈夫よ。きっと助かる。ジョンが守ってくれる)
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息子が眠る治療室は、窓全開で網戸に埃。天井から雨漏りのように何かの液が滴り落ちてきて…
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「この犬を連れた青年が事故に遭って、今、U総合病院に救急搬送されました」事故に遭ったのは私の息子だった
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