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第一章 ラピスラズリの小さな海で
街の市場もライフラインもそんな様子では当然回らないため、この時期だけは国全体で「帰省可能週間特別措置」として電気、水道、ガスなどのかつて使われていた地上の設備を、移住計画実施前に各施設に設置した完全自動管理システムを全面的に稼働させている。
つまり、発電所などにあるロボットが人の代わりに装置を動かすことによって、作業員がいなくても地上では問題なくライフラインを使えるようにしているのだ。
加えて全国のそれぞれの市区町村に一ヶ所ずつ「食料、日用品拠点」として指定されたスーパーマーケットや商店に、あらかじめ申請のあった帰省希望者が自由に買える程度の物資を入荷し、会計や管理をロボットが行うことによって買い物のようなこともできる。
街に人の姿がほとんどないことを除けば、基本的にいつも通りの生活を問題なく行えるというわけだ。
毎年二回決まって休暇を取るユウキを教師はあまりよく思っていないようだが、成績は学年でトップクラス、やけに達観していてあまり友達を作ろうとしない点を除けば生活態度にもこれといった問題はないユウキを咎める気にはなかなかなれず、渋々許可をするしかなかった。
クラスメイトたちは「せっかく旅行するなら海底都市にすればいいのに。人もいないし、地上に行ったっていつもと同じような生活するだけでしょう? 何が楽しいの?」と不思議そうな顔をするが、生憎ユウキは大勢の人がいる場所にも非日常の生活にも全くもって興味がなかった。
ただ、かつて愛したあの街で、美しい地で、ほんの数日間だけでも静かに暮らせたらそれだけで満足だったから。
涼月市は県内でも比較的大きく昔は人口も多かった街で、拠点として選ばれた店も市内で一番栄えていたショッピングセンター内のスーパーマーケットだった。だがそれ以外の店はどれも撤退して「テナント募集」の張り紙が貼られたままか、格子状のシャッターを下ろしただけで商品もそのままになっているかのどちらか、のはずだった。
いつものように二日目に買い出しのためにショッピングセンターに向かい、必要最低限の食料と、ストックが無くなりそうだったティッシュペーパーを購入して、気が向いたので誰もいない建物の中をふらふら散策した。スーパーのある区画以外は、照明もエレベーターやエスカレーターも止められている。
真っ暗な二階以降のフロアは懐中電灯があったとしても立ち入る気になれないが、一階の店であればスーパーの照明の光が届く範囲はかなり広かったし、元々出入り口の数が多い造りなためか、透明な自動ドアや飲食店の大きな窓から差し込む太陽光のおかげでほとんど全ての店を見ることができた。