その中でも、最も暗い場所にある小さな雑貨屋がユウキが毎回必ず訪れるお気に入りの店で、(よくないことだとは承知の上で)たまにいいものを見つけると一つだけ持ち帰って地上の家の自室に大切にしまっていた。
人が立ち入らない以上、商品のラインナップが変わり映えしないのは当然のことで、しかし奇妙なことに、この店だけは毎回どれだけ時間をかけてじっくり探索しても、次訪れると前回見た覚えのないようなものが少なくとも一つは棚に並んでいるのだった。
最初こそ不気味に思って慌てて逃げ出したが、二回目、三回目となるとむしろ興味が湧いてきて、八回目の帰省となる今は「今回はどんな物が入荷しているのだろう」と少し楽しみにしながら律儀に毎回閉めているシャッターを、バックヤードで見つけた鍵で開けて泥棒よろしくこっそり侵入している。
見慣れた商品棚を、しかし、小さな変化も見逃すまいと隅々まで見て回る。
とうに賞味期限が切れているであろう海外輸入品のクッキー缶、薄暗い店内でも目立つサイケデリックなカラーのぬいぐるみなど、いつもの顔ぶれがほとんどだが、それでも順に巡っていくと一つ、また一つと見慣れないものが見つかって、全て見終わった後にそれらを並べてどれを持ち帰ろうかと吟味する。
だが今回は最後の棚に辿り着くまでどれだけ確かめても目新しい物が見当たらず、疑問に思いながら立ち止まったレジ前の小さな棚……売れ残りのセール品が並ぶその中で、カラフルな店内に似つかわしくない地味な色の袋を見つけた。
「“人魚の素”……知育菓子かな……?」
粉と水を混ぜて作る不思議なお菓子は地上でも海底でも小さな子どもたちに大人気なのでもちろんユウキも知っている。そういった商品の中にはこのように少し変わった名前で子どもの好奇心を刺激するものもあるし、別段珍しいものでもない。
しかしそれにしてはパッケージのデザインがあまりにも地味で簡素すぎる。そもそも、保存性があるとは到底思えない紙袋にどう見ても手書きの文字で“人魚の素”と書かれたこれをパッケージデザインと呼んでいいのかどうかも怪しい。禍々しい店内で味気ない色の商品を一つだけ置いて逆に目を引く狙いがあるなら話は別だが。
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