よくバーテンは遊び人だとか言うが、そりゃあそうだろう。だって誘ってくるのは客の方なのだ。しかも特に暁を好きとかではない、彼女らが求めているのは後腐れない一夜の慰めだった。つまり遊び慣れた水商売の男と安全に、しかも安上がりに遊びたいだけなのだ、こっちは期待に応えているだけで深い意味なんてありゃしない。
もちろん若く美しい女ばかりではない。特に暁はまだ24だから、周りのほぼ全員が年上だったし、人妻も母親も中年も、独身の嫁き遅れもいた。だが多少の年齢や美醜、肉付きはそこまで気にならなかった。理由ははっきりしている。暁は甘やかしてくれる女が好きだったのだ。
サラリーマンを辞めてすぐに、学生時代からの彼女とは終わった。ぐずぐずと転職先を決められないでいたら見限られたのだった。向こうはしっかりと就職先で頑張っていたから、もどかしかったようだ。情けないと見られたのだろう。まあ、理解出来ないわけではない。
この小さなバーで働き始めて半年、実は今の生活が結構気に入っている。早起きは苦手だし、シェイカーの練習も楽しかった。なんせマスターが魅力的だし。
真剣に酒に向き合いながらさらりと客の相手をするマスターは、掴み所がなく、実にスマートな大人らしい大人だった。俺をバカにするやつもいないし、年上の客たちと話すのも刺激になり、会社員生活よりずっと楽しかった。そう、結果的には良かったのだ。
午前1時、閉店まで後1時間か。さて片付けよう。明日、いやもう今日か、日曜は定休日だ、のんびりするか。
今日は誰にも誘われなかったことにほっとしていた。もちろん面倒な時は断るだけなのだが、断りにくい時もある。揉め事はごめんだし。
「暁くん、たまには男2人で飲むか」珍しくマスターが誘って来た。
「はあ、いいですよ……」
もう1人のバイトは圭太と言って今日は休みだった。数少ない身近にいる年下、現役の大学生で、しかしバーテンとしては先輩だ。3人揃うと閉店後、そのまま店に残って飲みながら話すことは時々あったが、マスターと2人で外に出かけるのは初めてだ。
「オーナーはいいんですか?」
店のオーナーはいつも土曜に店に顔を出す。
「今日は来れないらしいから。ファミレスでいい?」
「いいですよ、俺もよく行きます。何時でも開いてるし何でもありますしね」
オーナーは40過ぎの女性で、マスターの恋人だった。ごく普通の冴えない中年女性で、昼間パートで働いているらしかったが、少なくともおしゃれなバーにも渋いマスターにも、似合うとは言えない女だ。
店に顔を出しても事務室に引っ込んでいるか、はじっこの席で大人しくノンアルコールを舐めてるだけ、どうやら下戸らしい。口は出さずに店はマスターに任せているようだった。まあ人は良さそうだけども、わずかだが片足を引きずっているのもみっともなかった。
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ぬくもりを求め、女性と一夜限りの関係を続ける24歳のバーテンダー暁。彼が年上女性に甘えるようになった過去の出来事とは…
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