【前回の記事を読む】新卒4か月で退職、彼女にも捨てられバーで働き始めた24歳の青年。女性に誘われれば誰だろうと気にしない、そんな彼が求めていたのは…
第一章
この渋いマスターにあのダサいおばさんか、と最初は驚いたもんだ。
「酒はいいな。腹減った」
「俺も……」
オーダーを済ますと、ファミレスの大きな窓から、派手なスーツと髪型をしたホストたちが集まっては騒いでいる様子がうかがえた。
「ホストか、賑やかだね、若いよね。……暁くんは年齢の割には落ち着いてるよね。同じくらいだろ」
「はあ……。騒がしいのが苦手なだけで……」
もう1度窓を見やると、上の方で何かが動いた。
「あ、ヤモリ……」
小さな物体はファミレスの大きな窓の端をチョロチョロと蠢くと、白い腹を見せながら離れたホストたちを舐めるような格好で止まった。
「そう言えば、知ってる? ニホントカゲの子供って、しっぽが青いんだよ」
「トカゲ……? ですか?」
「うん、たまに高尾山とか行くんだけど、去年なんだけどさ、ちょっと色が変わったトカゲ見つけたからさ。調べたんだ、ほら」
マスターは携帯の写真を見せた。
「あ、本当だ……。しっぽだけ青いし、何かグラデーションかかってますね。これ子供なんですか?」
「うん、ニホントカゲの幼体だって。珍しいらしいよ」
「はあ……山とか行くんですね」
「うん、マリが好きだからたまに。まあしんどいのは嫌だし、マリも足がああだから、ケーブルカーがない所は行かないよ。なかなか気持ちいいもんだよ」
「オーナーがね……」
確かに自然が好きそうだ。
「この青いトカゲは虹色とかげとも言って、スピリチュアル的に縁起いいらしいよ」
「はあ、そうですか……。確か蜘蛛もヤモリも縁起良かったですよね」
「スピリチュアルってのは懐が広いのさ」
何の話だ?
「スピリチュアルに興味あるんですか?」
「いや別に……。マリはちょっとあるみたいだな。ほら事務室にも神棚あるだろ。験担ぎだな。料理来たよ、食べようか」
食事があらかた済むと、マスターが話し始めた。