【前回の記事を読む】「こういうお店初めてなんです」雨の夜、バーに現れた23歳の女性客。仕事の悩みを話す彼女は、わずか2杯で顔が真っ赤になり…

第二章

「なかなか長かったな、まあ酔っぱらう前に帰ってくれて良かったよ」

マスターが言った。

「そうですね、不満が溜まってたみたいで……でも素直で可愛かったですよ」

暁は彼女の話を去年の自分と重ねていたのだ。空回りして、孤立していて、我慢して……。誰かが慰めてやらなきゃ、きっと疑心暗鬼になってしまう。

そう、俺がそうだったように……。

次の日の土曜日、オーナーがやってきた。

「お疲れさま、もう梅雨入りね。ちょっと暇になるかもね、これ差し入れ」

オーナーのマリがたい焼きを差し出した。ちょうど客も2人しかいない。

「お、いいね」

マスターが嬉しそうに受け取った。

「あんこ2つにカスタードに抹茶か……圭太くん何がいい?」

「自分、抹茶で」

「暁くんは?」

「何でも……」

「じゃああんこかな。マリ、カスタード好きだろ」

「うん、いい?」

普段も優しいが、マスターはオーナーには特に優しい。どうしてもこの冴えない女性にマスターは勿体ないように思ってしまうが、仲良しなんだよな……。

2人は穏やかな空気に包まれている。ふと見ると、マリの手首には、虹色のブレスレットがあった。

そう言えば……暁は虹色とかげとやらを、携帯で調べてみた。

……幸運の兆し、か……。今まで忘れていたし、俺が見たわけじゃないからどうでもいいけど、話題にはなる。

「オーナー、この前マスターに教えて貰ったんですけど、虹色とかげっての見たんですよね?」

マリがふっと笑顔になった。

「そうなの、すぐ見えなくなっちゃったけど確かに青かったのよ。キレイだったわ」

「何かいいことありましたか? 幸運が来るって印ですよね?」

「あったわよ、暁くんがウチに来てくれたの。圭太くん大学忙しいし、いい人が来てくれたもの。良かったわ」

「え……俺?」

思いがけない答えだった。確かにバーテンの生活は気に入っているけど……。

「そうなの、だから暁くんのイメージがトカゲなのよね」

「はあ……トカゲねえ」

どこがだ?