第1章 本書の重要事項

重要事項13 科学と非科学(擬似科学)

科学とは検証できる論理のみであるという論理実証主義は、検証を通して科学的理論を証明することは不可能であるという認識により退けられました。科学的理論が検証によって証明できないのは、その理論に合わない科学的事実が生ずることはないという証明はできないからです。

替わって、現在では、カール・ポパー(20世紀のイギリスの哲学者)の提唱した、科学とは、反証可能性を持つ理論であるということが妥当なものとして受け容れられています。そうしますと、反証可能性を持たない理論は非科学であるということになります。

この考えによれば、伝統的な哲学は非科学に分類されることになります。なぜなら、哲学には、自由に物事を考える姿勢とその成果は参考とすべき点は多々ありますが、少なくとも今現在反証できないもの(前提もそれが構成する体系も)が多く含まれているからです。

ある物事について、相反する対極にある主張も反証できないままにそのまま並列して居座り続けるという例は哲学界には珍しいことではありません。

対して、科学は自らには足りないところがあることを常時自覚し、それを克服して進歩することを目指しているものですから、地に足がついているという意味においても、哲学よりも信頼を寄せることができます。つまり、反証されることが進歩するための原動力となっていることになります。

このように考えますと、ポパーのこの分類方法は論理実証主義の欠点を修正し、わかりやすく当面実践的に有用な方法であると考えられます。

然るに、これは哲学的思索からは反論があって然るべき分類方法になります。

なぜなら、反証できるかできないかはどのように判定されるのか、という重大な問題が存在しているからです。この問いにはっきりした答えがない限りポパーの分類方法も完璧とは言えないことになりますが、反証できないことを証明することこそ不可能かそれに近いように見えます。